こんにちは。社会福祉士・ケアマネジャーの吉田です。
要介護認定を受け介護保険サービスを利用したいと思ったとき、サービスの利用にはケアマネジャー(介護支援専門員)が作成するケアプランが欠かせません。
ケアプランは正式に介護計画書といい、利用者の心身状況やニーズに基づいて作成された介護保険サービスの利用計画書のことです。
ケアプランには書き方の注意点が多く、ケアマネジャーの実務をされている方はどのように書けばいいのか悩む方も少なくありません。
今回は、ケアプランの書き方について例を挙げて説明しますので、ぜひ参考にしてください。
ケアプランにはどんなことが書かれているの?
ケアプランに使用する書類の内容について詳しく見てみましょう。
居宅サービスにおける標準的なケアプランの書式は、第1~7表の7枚から構成されています。それぞれ必要な書類を本人と介護事業所、ケアマネジャーとで共有します。
要介護の方のケアプラン第1~7表に記載される内容は以下の通りです。
第1表 居宅サービス計画書(1)
要介護認定の情報・利用者と家族の意向・介護認定審査会の意見及びサービスの種類の指定・総合的な援助の方針
第2表 居宅サービス計画書(2)
利用者の解決すべき課題(ニーズ)、長期目標と短期目標、ニーズ解決に向けた具体的な介護サービスの内容・種別と援助内容(頻度・期間)
第3表 週間サービス計画書(3)
利用する介護サービスを組み合わせた1週間の計画表
第4表 サービス担当者会議の要点
利用者・家族の意向、サービス担当者会議で話し合った記録
第5表 居宅介護支援経過
ケアマネジャーと利用者とのやりとりの記録(相談や連絡、支援内容、モニタリングなど)
第6表 サービス利用票(兼居宅サービス計画)
サービスを提供する各事業者の提供時間帯、サービス内容、事業所名などが記載された1カ月の計画表
第7表 サービス利用票別表
1カ月のサービス毎の単位数や金額、利用料金
要支援の方のケアプランは、介護予防サービス計画(介護予防サービス・支援計画表・週間サービス計画表)となり、地域包括支援センター(介護予防支援事業者)が作成します。
ケアプランの作成については、こちらの記事がおすすめです。
ケアプランの長期目標・短期目標
ケアプランは利用者の心身状況や生活環境を考慮し、その方が希望する“その人らしい”生活の実現に向けた計画書ということを前提に、希望の実現に向けた目標が設定されます。
それが、第2表に記載される長期目標と短期目標です。
第2表には、第1表で記載された利用者・家族のニーズを実現するために必要な手段を利用者本位の視点から具体的に作成します。
長期目標
将来、自身が具体的にどうありたいかということ。
短期目標
長期目標を達成するための段階的な目標。
長期目標と短期目標を設定する際は、決してケアマネジャー本位になってはいけません。利用者自身の意向に沿った、前向きに取り組める目標設定が前提となります。
目標を定める際はそれぞれの達成期間設定をしますが、長期目標○カ月・短期目標○カ月というように定まっていませんので、利用者、家族と話し合いともに相談しながら適切な期間を設定していきます。
目標期間終了後は?
目標の期間が終了した場合は、目標達成状況についてモニタリング(評価)を行い、目標内容を変更するか、継続するかを検討します。
また、目標の期間内であっても、利用者の心身の状況や介護環境、ケア内容が変わった場合には目標を見直し、必要であれば改めてケアプランを作成し、常に利用者の心身の状況に応じてケア内容、目標決めて最新の状態を保ちます。
ケアプランの書き方例
実際のケアプランがどのようなものになるか書き方の事例をご紹介します。
Aさん、85歳女性、要介護度2のケース
室内はタンスや壁を伝い歩きで移動できるが、食事・入浴・排泄などは見守りと一部介助が必要。トイレが遠いので間に合わないことがある。
物忘れもあり、外出するのが億劫だと自分の部屋に閉じこもりがちになっている。
長男家族と同居しているが、就労のため日中独居。
〇本人の意向…できるだけ身の回りのことは自分でしたいが、歩行が不安定。入浴は1人では怖いので手伝ってほしい。また温泉旅行に行きたい。
〇長男(キーパーソン)の意向…部屋にこもっていると、足腰が弱く認知症も進むのではと心配。認知症がひどくならず明るく元気に過ごしてほしい。
〇ケアプランの狙い
下肢筋力と意欲の低下により廃用症候群のリスクが高く、部屋に閉じこもりがちになっているため、外出の機会が必要。
ADL(日常生活動作)の維持向上とともに、「温泉旅行に行きたい」というゴールに向けてのプラン作成を行う。
Aさんのニーズ(課題)に沿って目標と期間設定をしてみます。
脳梗塞後遺症による歩行不安定や転倒リスクがあるので、スムーズに歩行できるようになりたい。
長期目標:下肢筋力を向上し、近くの温泉へ行けるようになる
短期目標:リハビリによって、移動動作が安心して行うことができる
手伝ってもらいながら入浴し、快適に過ごしたい
長期目標:身体の清潔を保ち、爽快に過ごすことができる
短期目標:介助のもと、ゆっくりと入浴できる
外出する機会を持ち、認知症の進行や身体機能の低下を防ぎたい
長期目標:デイサービスを利用し、社会参加し心身機能の低下を防止する
短期目標:毎日の生活リズムを作り、健康状態を維持できる
課題と目標設定から、デイサービスの利用によって社会参加、入浴の機会、機能訓練の計画が検討されます。
「本人の目指すゴール」「自立した本人らしい生活」を実現できるような、長期目標と短期目標の設定が大切です。
人生の彩りとなるケアプランを作成しよう
いかがでしたでしょうか?
ケアプランの書き方について詳しくご紹介させていただきました。
適切なケアプランを作成することで、適切な介護サービスの利用と本人や家族の意向を尊重し、その人らしい生活の継続につながります。
一人一人の心身状況や意向は異なりますが、いかに利用者に寄り添って・利用者を尊重したケアプランを作成するかによってより良いケアが提供されるポイントとなります。
利用者が本当に望むゴールや生きがいを見つけることは、ケアマネジャーの腕の見せ所ともいえるでしょう。
(Posted by 吉田杏)