食事は多くの人にとって楽しい時間の一つ。もちろん介護を必要とする高齢者も同じです。しかし食事介助の姿勢や方法、食品の形状によっては誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがあるので注意しなければいけません。楽しいはずの食事時間が、利用者にとって苦痛になってしまうのは介護職として避けたいですよね。
今回は安全でスムーズな食事介助をするための姿勢と嚥下能力が低下している高齢者が食べやすい食品の形状、そして食事介助時のコツとポイントについて紹介します。
食事介助時の適切な姿勢
高齢者の食事介助で大切なのが姿勢です。食べ物がスムーズに喉の奥に通るように、適切な姿勢を保つ必要があります。イスと車イス、そしてベッド。3つのタイプ別食事介助法を見ていきましょう。
イスに座って食事をする場合
最も誤嚥のリスクを低くできるのが、イスに座って食事をする方法です。座位姿勢を保てる利用者は、なるべくイスに座って食事をしてもらいましょう。ポイントは両足のかかとを床にしっかり付けることと、やや前かがみの姿勢を取ることの2つです。
背中を背もたれに付けない状態で着席し、かかとが床にしっかり付くかどうかを確認してください。もし床に付かない場合は踏み台など、高さを調整できるものを設置すると良いでしょう。
食事中はやや前かがみの姿勢を取ることで、誤嚥を防ぐことができます。イスに浅く座る、どうしても背中が後ろに倒れてしまう場合はクッションを背部に設置するなどが有効ですね。
車イスに座って食事をする場合
車イスに座って食事をする場合も、イスに座って食事をする場合と姿勢は同じです。ただしフットレスを外して、かかとは床に付けるようにしましょう。
介助者仕事が忙しいと、ついついフットレスから足を下ろすのを忘れがちです。しかしフットレスを使用した状態で食事をすると前かがみになりにくく、誤嚥を引き起こす可能性が高まります。
ベッド上で食事をする場合
ベッド上で食事をする場合、まずはリクライニングの角度を高齢者の状況に合わせて30~80度程度に保ちます。頭の後ろにクッションや枕を入れて、アゴを引いた状態にしましょう。膝を軽く曲げられるように、膝下にもクッションや枕などをはさんであげてください。
ベッド上で食事をする場合、長時間同じ姿勢を取り続けるのは負担になります。高齢者の体調をよく観察しながら食事介助を行うことが大切です。
高齢者が食べやすい食品の形状
続いては高齢者が食べやすい食品の形状について紹介します。誤嚥を防ぐためにも、食品の形状についてはしっかり理解しておきましょう。
やわらかくて粘度があるもの
1つ目は、やわらかくて粘度があるものです。咀嚼する力が低下している高齢者は、硬いものよりもやわらかいものの方を好みます。硬いものは咀嚼がしにくく、十分に咀嚼しないまま飲み込んでしまうと誤嚥を起こす可能性があるので注意しましょう。
またある程度の粘度があるものは口の中で食べ物がまとまり、飲み込みやすくなります。すりおろした長いもやレンコン、納豆、つぶした豆腐などの食材の他、片栗粉やトロミ剤を使用するもの効果的ですね。反対にパサパサと乾燥したものは飲み込みにくいです。
一口サイズのもの
食品は一口サイズにするのも大切です。食品を小さいサイズにすると高齢者も咀嚼がしやすく、食べやすくなります。
前歯の力が弱った人でも、無理なく咀嚼することができるでしょう。
食品の硬さと形状が同じのもの
最後は食品の硬さと形状が同じのものです。硬い食品と柔らかい食品が混じったもの、また水分を多く含むものと含まないものが混じったものは嚥下しにくくなります。
口の中に入れる際は、なるべく食品の硬さと形状が同じものにすることが大切です。
【高齢者の食事量はどれくらい?の疑問にお答えします】
食事介助時のコツとポイント
誤嚥を防ぐためには姿勢や食品の形状以外にも、食事介助時に配慮できることがたくさんあります。食事介助時のコツとポイントについて見ていきましょう。
介助者は利用者と同じ目線で食事介助をする
食事介助をする際は、介助者が利用者と同じ目線になることが大切です。必ずイスに座って介助をしましょう。
忙しさから立った状態で介助をすると利用者の顔が上を向いてしまい、誤嚥を引き起こしやすくなります。
食事開始前に水分で口腔内を潤しておく
食事を始める前に、必ず水分を摂取して口腔内を潤わせておきましょう。口の中が水分で潤っていると食べ物を飲み込みやすくなり、誤嚥を防ぐことができます。
食事は味噌汁やスープなど、水分を多く含むものから始める
味噌汁やスープなど、水分が多い食品から食事をスタートさせることも大切です。水分が多い食品は嚥下能力が低下した高齢者でも食べやすく、また胃散分泌を促して食欲を増大させてくれます。
【食事がうまくのみ込めないときは・・・こちらも試してみてくださいね】
食事に集中できる環境を作る
食事中に気が散ってしまうと食事量が減ったり、十分に咀嚼をしないで飲み込んでしまったりすることも考えられます。食事に集中できる環境を作りましょう。
食事前にトイレを済ませておく、テレビを消す、気になるものを遠ざけておくなどが有効です。リラックスした状態で食事ができるように、ヒーリング系の音楽をかけるのもよいですね。
適度に声をかけて食事を楽しんでもらう
食事時間を楽しんでもらうためには、適度に声をかけることも大切です。「美味しいですか?」「ゆっくりかんで食べてくださいね」など、楽しめるように配慮をしましょう。
食事はなるべく30分以内に終わらせる
食事は楽しい時間の反面、身体能力が低下している高齢者にとっては重労働。あまりにも長く食事時間が続くと負担になってしまいます。
食事を焦らせることはNGですが、なるべく食事時間は30分程度を目安としましょう。そのためにも食事に集中できる環境作りが重要です。
まとめ
高齢になると身体能力や嚥下能力が低下するため、一人ひとりの状況に合わせた食事介助が必要となります。間違った食事介助法を取ると誤嚥性肺炎を引き起こすことがあるので、注意しましょう。
身体能力に合わせた姿勢を取り、咀嚼能力や嚥下能力に合わせた食品形状を選ぶだけでなく、食事介助時の目線や声かけなどにも配慮してください。
今回紹介した記事を参考にして、スムーズな食事介助と楽しい食事時間を提供してくださいね。
(Posted by Ahmad)

ヘルなび編集部のゆうきです。
3年間福祉業に従事後、IT業界へ。今はWEBライターをしています。 福祉用具専門相談員と食品衛生責任者の資格を持っていますが、活かす機会がなかなかありません…。
なんにでも興味を持つ性格で、趣味はゲーム、ドライブ、心理学、その他多数です。